スイスの新学期


8月の中旬、まだ夏休み真っ盛りのイメージだが、スイスの学校は新学期へ入るところが多い。

小学校などでは、2年おきに担任の先生が変わる場合が多く、子供達も少し緊張する時期だ。新1年生はまだ右も左もわからず、これから学校生活に慣れて行くわけだが、幼稚園の時とは違って規則も厳しくなる。
一部のカントンでは、1年生と2年生を同じクラスにして、クラス内で先生が学年別に分けて授業をする試みがなされている。知人の子供がそうしたクラスにいるのだが、比較的うまく機能しているようで、当初懐疑的だった保護者も納得している様子だという。
このシステムの狙いは、1、2年生の場合、まだ学力にもバラツキがあり、例えば1年生でも課題が簡単すぎる場合は退屈しないように、2年生の課題を与えて授業を進めることができる。その逆もあり、1年生の時点で理解できていなかった箇所を1年生の課題で復習させることも可能で、思っていたほどの混乱はないようだ。ただし、先生の方は2クラスを受け持っているのとそう変わらないので、なかなか大変そうだ。

こうした新たな試みを、各自治体レベルで実施できるスイスには感心する。まずはやって見ようという精神がいろんなところで感じられ、うまくいかない場合は取りやめる場合もあり、教育現場ではいろいろなことが試されているのがわかる。数年前までは小学校は5年だった自治体が、今は6年になっていたり、30年前は小学校が4年で終わった地域もある。さらにフランス語圏とドイツ語圏では、もっと違う場合もあり、実際には学力の差などに応じて変えている場合もある。
例えば、バーゼルランドからバーゼルシュタットのギムナジウムに進学する場合も、どの地域から来たかによって、学力の差が顕著に出るそうだ。その場合は、留年もしくは学校のレベルを下げて転校になる。
細かい話をするとややこしいが、スイスでは中学から学力別のクラスになると思って良い。ちょうど日本の高校入試のような感じだ。
中学から職業訓練校の道に進む生徒もいるし、まだ職業を決めれない場合で成績が良い場合は、大学進学コースに進んだりと、進路を決めるには非常に早い時期でもある。
問題点がないとは言わないが、これで比較的スイス全体がうまく回っていて、誰もが手に職を持つことになり、欧州の中でもトップクラスの経済状況なのだから、恐れ入る。

早ければ、中学時期から将来の職業を真剣に考えていかねばならないスイスの子供達にとって、まさに真剣勝負の日が始まるわけである。
本人に自覚があろうとなかろうと、この流れには逆らえないわけで、国の教育政策がいかに重要かがわかる。

暑かった夏が少しずつ落ち着いてくるように、子供達が徐々に学校生活に戻って行く8月は、将来へのスタートの時期でもある。