国境際のビジネスアイデア

先日のスイスフラン高の対策として、下限を1ユーロ=1.2フランに設定したのは記憶に新しい。この介入の前は、とにかくスイスフランは高騰し、ユーロに対しては1ユーロ=1フランまで上がっていた。
国内経済、輸出産業にとっては大打撃であるが、ドイツとの国境際に住むスイス人にとってはそうでもなかったようだ。

当たり前であるが、ユーロが安いから、ユーロ圏でいつも買い物をする人は、いつもより財布が助かる。(注:何でもスイスより安い訳ではない。)スイスとドイツ、フランスの国境に接するバーゼルでも、普段からドイツにある大型ショッピングセンターに食料品の買い出しに行き、週末は多くのスイス人で賑わっている。今回は、スイスフラン高が拍車をかけて、かなりの賑わいを見せていた。

このショッピングセンターから歩いて5分、連日スイス人が行列をなしている光景を目にした。そこはただの「倉庫」である。一体なんなのかというと、ドイツまたはEU圏内のオンラインショップ等で買い物をしたスイス人が、ドイツ国内の受け取り先住所として、この倉庫を利用しているのである。もちろん、スイスに配送してくれる業者は多いが、それにはもちろん送料がかかる。そして、スイスで受け取る場合は、価格にもよるが、関税や手数料を取られる事がある。
日本から荷物を送ってもらって、受け取りの際、税関の手続き手数料や税金を払った人も多いと思うので、分かって頂けると思う。

そうすると、ドイツ国内に配送してもらって、自分で取りに行けば安いという事になり、面倒な手続きも減る。国内配送なので、19%の税金還付は受けれないケースが多いが、送料は国内無料の場合が多い。(ただし、200フランを超える買い物の場合は、スイスの税関で申告が必要で、スイスの消費税をかけられるので、注意及び確認が必要。)

この倉庫では、荷物の大きさと重さに応じて、受取手数料を取っているが、その額は2ユーロから、大きいものでも11ユーロの手数料で、大した金額ではない。事前にオンラインで登録が必要だが、荷物を受け取りに行った際、会員証がもらえる。暗証番号を記憶させ、次回からはその番号で認証し、荷物を受け取れる。
まさに、国境際のニーズある商売である。
http://www.serviceadresse.com/

スイスでも最近ニュースになっていたが、スイスで販売される同じ商品がドイツやEU圏の国では、随分と安い。化粧品では、スイスの3分の1で買えてしまう商品もあり、19%という高い消費税を払ってもまだおつりが来るようなケースも。(注:何でもスイスより安い訳ではない。)

とにかく、ものは試しで、当方もこのサービスを利用してみた。
登録は下記からできるので、情報を入力して送信すると確認メールが入る。
http://www.serviceadresse.com/kontakt.htm

そうすると、顧客番号と、自分が利用可能な住所が記載されているので、オンラインで買い物の際は、この住所で入力するようにと書いてある。単純に<自分の名前+顧客番号>c/o<倉庫の住所>になる。

そして、オンラインで買い物をし、荷物がこの倉庫に到着すると、「あなたの荷物が到着しました!」とメールが入るので、その受け取り番号が記載されたメールをプリントアウトして、持って行くだけ。
実際に受け取りに行くと、倉庫の外までスイス人の列が。隣の駐車場も満車という状態には驚いた。中には、明らかに業者の格好をしている人もいて、もしかして、資材などをドイツ国内で調達して、スイスで利用しているのだろうか?それがスイスの卸価格より安いなら、経営者なら間違いなくそうするであろう。スイス側の消費税を払ってもお釣りがくるのは、容易に想像出来る。

こうした国境際のスイスフランとユーロの関係をうまく利用した、いわゆるニッチな市場に目をつけたこの会社に感心する。ちなみに、ドイツではガソリンが高いらしく、スイス側のガソリンスタンドには、ドイツのナンバーの車がずらっと並ぶ。なにもスイス人だけが得をしているようではないみたいだ。

こうした国境際には、バーゼルに限らず、大型のショッピングセンターがある事が多い。まして、今はユーロが安いのだから、EU圏にしてみれば、今のうちに輸出で稼いでおきたいところだろう。
国境に接する国ならではの経済事情は、島国の日本人からすると興味深い。

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