バーゼルの音楽家のビザ更新について

スイスのバーゼルは、バロック音楽で世界的に有名なところです。バーゼルにある音楽院に来る音楽家達は、既に各国で優秀な成績をおさめたトップクラスの音楽家達が揃い、地元スイスの学生がなかなか入学出来ない事でも知られています。
卒業後は、ソリストとして活動していく方が多いわけですが、外国から来ている人が多いため、オーケストラなどに雇用されない限り、ビザの更新で悩まされると聞きます。

そのバーゼルの音楽家達55名が今苦境に立たされています。
バーゼルは、これまでに発給されていたL-Bewilligungビザ(短期滞在型ビザ)の更新を、2015年8月で終了するという決定をしました。今までのフリーランスの音楽家のビザが違法だった可能性があると言うことです。

この件について、バーゼル在住の音楽家の方にお話を伺いました。
「L-Bewilligung に関して説明すると、短期滞在ビザで、年間240日しかスイス国内に滞在することができません。職種を問わず、Pensum 75 % 以下の雇用者、またはフリーランスの労働者(この場合、Pensum は全くカウントされません。)が対象です。このビザでは、例えば、長期契約ができません。携帯電話や住居、銀行口座等が当てはまります。(大体は皆、B-Bewilligung を持っていた学生時代のものを延長して使用しています。)

音楽家で75% のPensum を持つことはほぼ不可能に近いのです。モダンのオーケストラで固定のStelle を持つこと以外、不可能です。実際音楽院の教授陣も、これだけのPensum を持っている人はほとんどいません。

また古楽という分野は、バーゼルは世界的に有名ですが、音楽形態からしてモダンのオーケストラのような雇用先が皆無なのです。ですから、フリーランスでやっていくしかなく、または音楽学校などで教えたり、別の職業のサイドビジネスをしている人もいます。」

1月25日で締め切られた署名運動では、28.000近くの署名を得られたとの事ですが、2月11日の時点で、2011年の1月以前からL-Bewilligungを受給していた音楽家17名は、ビザの延長が認められたようです。そのうち15名は、不公正な判断だったと認められました。
http://www.20min.ch/schweiz/basel/story/Bund-anerkennt-Haertefaelle-im-Orchestergraben-14174609 (参照:20min.ch online)
しかしながら、残る38名の音楽家達は8月までに、次の可能性を探り続ける状況にあります。

スイスワンダーネットでも、このビザに関する質問が非常に多く、カントンレベルで多少異なる面もあり、規定も時代に応じて変化していくものなので、難しいものがありますが、スイスに住む外国人としては、やはり避けては通れないビザの問題。現在問題がない人でも、いつどんな形で、滞在や労働に関する条件が変わるかはわかりません。

永住権、いわゆるCビザを取得した方は、スイスの国籍取得の申請を出す事が出来ます。申請中は居住する住所やゲマインデ(市町村)を変更出来ないのですが、最近ではCビザを取得していても、そのカントンもしくはゲマインデでの最低滞在年数を申請条件に加えたところもあると聞きます。どこの国においても、その国の国籍を取得するのは容易ではないですが、増加傾向の外国人移住者への条件は、スイスでも年々厳しくなっているようです。

日本もかつては島国と言う環境が、人の移動にも制限をもたらしていましたが、今やグローバル化とともに、国境はいつでも超える事が出来ます。スイスのような小さな国では、移民の制限やEU圏外の外国人の流入を減らすための政策だとは思いますが、文化を大切にするバーゼルだけに、出来る限りの受け皿を作って、優秀な音楽家の活動出来る環境整備も検討して頂きたいと思います。